完全電離Plasma、弱電離Plasma   

原子に加速した電子を衝突させてエネルギーを与えると、原子核の周りを回っている最外殻の電子が飛び出す。そして、正イオンと電子に分かれる。これを「 電離 」と呼ぶ。電離により、中性だった気体は、プラズマ状態へと変わっていく。自由に動きうる電子とイオンが十分存在し、巨視的には電荷の総和がゼロである状態をプラズマと呼ぶ。プラズマでは、荷電粒子間に電気的な力が作用する。それと同時に電荷の移動に伴って電流が流れる。プラズマには2種類ある。     
   ・「
完全電離プラズマ 」  電子とイオンのみを含む。(理想的なプラズマ)    
   ・「
弱電離プラズマ 」   電子とイオン以外に、中性の原子・分子も混在する。(通常のプラズマ)        

低温Plasma、高温Plasma  

  
低出力glow放電では、軽い電子は激しく動き、重い分子やionは動きが緩やかである。粒子の運動は、「 温度 」で表せる。激しく動く電子の温度は「 数万K 」と高い。 
動きの鈍い分子やionの温度は「
数百K 」と比較的低温となる。   
通常、分子やionの温度に注目して、これを「
低温Plasma 」と呼ぶ。   
電子と、分子やionの温度が違うので、「
非平衡Plasma 」とも呼ぶ。   
一方、高圧gasのPlasmaでは、ionと電子が激しくぶつかる。お互いの温度を交換し合い、ほぼ等しい温度となる。  そのため、「
高温Plasma 」又は「 熱平衡Plasma 」と呼ばれる。

 

 自然界のPlasma

  ・雷
    大気中で放電が起こるプロセスは、次の通りである。
     ・電子が高速で中性原子と衝突すると、原子内の電子を叩き出して、原子をイオン化する。
     ・強い電場が存在すれば、これらの電子は共に加速されて大きな運動エネルギーを得る。
     ・さらに衝突により、次々と原子をイオン化して、自由電子の数を増やし、大電流となる。

    地球上には、雷雲を発生させる「対流圏」、その上空には「成層圏」、さらに上空には「電離圏」が存在する。
     電離層は、「弱電離Plasma領域」となっている。
     電離圏は、「地上50〜1000km」の範囲で、電離度は低い。
     電離圏の成因は、主に太陽から放出される紫外線による「光電離」である。
     国際的な短波通信は、電離圏プラズマによる電磁波の反射を利用している。

  ・太陽
   「太陽」は、プラズマのかたまりである。
    太陽は、水素80%、ヘリウム20%、微量の重元素からなる。
    ガス状のプラズマをまとめているのは、自らの重力である。
    その膨大な重力を支えるため、太陽中心部では、高温・高密度状態になり、「熱核融合」が可能になる。
    また、「宇宙空間」もプラズマに満たされている。
    恒星と恒星の間は真空ではなく、星間物質に満たされていて、その一部は高温プラズマ状態である。

 

 人工的なPlasma

  ・熱Plasma
    燃焼による「火炎Plasma」が、最も身近なPlasmaとして知られている。
    ガスバーナーを点火すると、酸化反応によるエネルギーを放出して、気体が加熱して、電離する。
    こうして、Plasmaが簡単に形成される。
    また、大気中でアーク放電を起こすと、高温プラズマができるので、熱源として利用される。
    利用例には、アーク炉、アーク溶接がある。

  ・放電Plasma
    気体中に置かれた電極間に電圧を加えていくと、ある電圧で絶縁が破れ、導電現象を示す。
    放電現象には、主に、「glow放電」、「arc放電」、「corona放電」の3種類がある。

    放電Plasmaは、放電させるのに用いる電源の周波数により特徴が異なる。
     ・直流放電
       直流電源を電極間に印加して放電を行わせ、Plasmaを生成する。
     ・低周波放電
       50Hz〜100kHzの交流電源を電極間に印加して放電について考える。
       低周波領域での放電機構は、直流の場合と同様に取り扱うことができる。
       商用周波数(50又は60Hz)の放電Plasmaは、蛍光灯、arc溶接、水銀灯などに利用されている。
     ・高周波放電
       10MHz〜100MHzの交流電源を電極間に印加して放電を行わせ、Plasmaを生成する。
     ・マイクロ波放電
       1GHz以上のマイクロ波領域の交流電源を電極間に印加して放電を行わせ、Plasmaを生成する。