高周波放電
電極にかける電圧を高周波(MHz以上)の高周波で放電すると、放電の開始電圧は低下する。
そして、放電管に電極がなくても持続放電が可能となる。
高周波プラズマは、薄膜作成のためのプラズマCVDやプラズマ化学の分野で重要である。
さらに周波数の高いマイクロ波プラズマでは、電離度が高くなり、プラズマ密度が高くなる。
このプラズマは、半導体集積回路作成のためのCVDやエッチングなどに用いられる。
直流でも放電するが、半導体/LCDのProcess装置では、ほとんど高周波を印加しているのはなぜか?
高周波の方が放電開始電圧が低く、放電の維持も容易で、電極を絶縁物で被うことができる。
高周波では、電極gapが大きければ、電子が電極間を自由に往復できる。
そして、α作用が活発に行われ、低電圧で放電が開始し維持される。
通常、装置の電極は、gasによる腐食を防ぐため、絶縁物で被う。
この状態で直流放電を行うと、陰極の表面はionにより正に帯電し始め、放電はすぐに停止してしまう。
容量結合型高周波放電について考える。
「d: 電極間距離
」、「L:
電子の半周期における最大移動距離 」の大小により放電の形態が特徴づけられる。
比較的周波数が低く、「 Lがdに比べ、十分大きい
」場合、電子は瞬時に陽極に達する。
そのため、放電は「
α作用
」と「
γ作用
」で維持される直流と似た形態を示す。
逆に、周波数が高くなって、「 Lがdより十分小さくなる
」領域では、電子が陽極に達する前に極性が変わる。 そのため、電子は陽極に到達できず、電極間で振動を繰り返す。
このような状態を電子が「
トラップ
」されると呼ぶ。
トラップされた電子は、振動しながら[
α作用
(衝突電離)]を繰り返すため、γ作用は必要なくなる。 α作用が活発に行われているために電子の生成量は多い。
そして、放電開始電圧、放電維持電圧は、直流や低周波放電の場合に比べて低下する。
これは、電極が絶縁物に覆われた状態(無電極状態)でも放電が維持できることを示す。
高周波でPlasmaを作るのに13.56MHzが使用されるのはなぜか?
これはEN(欧州)規格で、工業、科学、医療用(ISM)に割り当てられた周波数である。
(ISM:Industrial Scientific and Medical)
この周波数であれば、最大放射限度値に制限がない。
その他の周波数では、妨害電圧の限度値が規定されている。(規定値以下では使用可能)
これは、通信用の無線電波との混信を防ぐための処置である。(MHzは、radio波と同じ短波領域) ISM基本周波数として国際電気通信連合(ITU)が指定している周波数の例
(ITU:International Telecommunication Union)
6.78MHz、13.56MHz、27.12MHz、40.68MHz...
それ以外での周波数での妨害電圧の限度値は、 周波数5〜30MHzの範囲で「60dB(μV)」。
高周波プラズマ中の電子の運動
電極が電場から受ける力は、「電子電荷×電場」となる。
また、Newtonの法則から、「電子の質量×加速度」としても表せる。
ma = e・E0・sin(ωt)
(e:電子の電荷(= -1.6×10-19q))
(ω:角振動数(= 2πf))
ω = 2π×(13.56)× 10の6乗 =8.52×10の7乗 (rad)
(m:電子の質量(= 9.1×10-31kg))
(a:電子の加速度)
ここでは、例として、高周波周波数fを「13.56(MHz)」、電場強度E0を「10000(V/m)」として計算する。
上の式を、時間で2度積分すると、次のような式になる。
X = −(e・E0/mω2)sin(ωt)
(X:電子の移動距離)
各変数に数値を代入すると、X ≒ 0.24 sin(ωt)となる。
つまり、電子は、1周期で、0.24m進み、0.24m戻る。(合計0.48m移動する)
電極間gapが「0.24m」より狭ければ、電極に電子が吸収される量が多い。