内部エネルギー
プラズマを構成する粒子は「
質量
」を持っている。
そのため、粒子の温度や密度が上昇すると、「
熱運動
」に伴うエネルギーが増大する。
これは、次の2つを意味する。
・プラズマが熱エネルギーを供給する「 熱源
」となる。
・プラズマは、プラズマを取り囲む壁面に「
圧力
」を及ぼす。
プラズマの構成粒子である原子・分子・イオンは、「 原子核
」と「 電子
」から構成されている。
そのため、次の2つが起こる。
・電子が上位のエネルギー準位に「 励起
」される。
・分子又は分子状イオンの場合には、「
振動
」又は「
回転
」状態に励起される。
このような粒子は、基底状態の粒子より余分なエネルギーを持っている。
プラズマを熱源(ヒートシンク)と見る時、利用できるエネルギーは、プラズマ系内部に蓄えられる全エネルギーである。
プラズマの持つエネルギー(内部エネルギー)
・個々の粒子の「
熱運動エネルギー
」
・個々の粒子の励起状態に関係する「
励起エネルギー
」
・個々の分子の「
解離エネルギー
」
・個々の原子・分子の「
電離エネルギー 」
温度が高くなればなるほど、この内部エネルギーは増大する。そのため、高温プラズマは極めて有効な熱源となる。例として、1.2気圧となる水素の内部エネルギーについて示す。
・「
常温
」での内部エネルギー 内部エネルギーは、「
熱運動
」と「
回転
」のエネルギー成分の和となる。
・「
2000〜3000K 」での内部エネルギー 「
振動
」が励起状態になるとともに、水素分子の「 解離
」が始まる。
・「
10000K
」での内部エネルギー 水素分子は、完全に2つの原子に解離してしまう。
内部エネルギーは、ほぼ「
熱運動
」エネルギーと「
解離
」エネルギーの和となる。
・「
10000K以上
」での内部エネルギー 原子内の電子が励起し始めて、電離が活発に起こり、イオンと電子が分離する。
完全電離プラズマになると、内部エネルギーは、熱運動、解離、電離エネルギーの和となる。
プラズマの「 圧力
」は、原子、分子、イオンの内部「 励起エネルギー
」には無関係である。 空間的な粒子の移動に伴う「
熱エネルギー
」に関係する。 プラズマ中に含まれる各粒子の密度と温度の積の総和で与えられる。
プラズマの圧力 = 煤i各粒子の密度×温度)
導電性
プラズマに電界が印加されると、イオンと電子の移動に伴い、電流が流れ、「導電性」が生じる。
通常、流れる電流は、イオンに比べて軽い電子によるものである。
弱電離プラズマでは、電子と原子、分子間の衝突が電子の移動を妨げる。
そのため、「導電率」はある値に落ち着く。
強電離プラズマでは、電子とイオン間の衝突が電子の移動を妨げる。
プラズマの導電率 σ = (e2ne)/(meν)
(σ:プラズマの導電率、e:電子の電荷、ne:電子密度、me:電子の質量、ν:衝突頻度)
完全電離プラズマの場合、 プラズマの導電率 σ = (Te)3/2 (Te:電子温度)
完全電離プラズマでは、導電率が電子密度やイオン密度によらない。
これは、電荷を運ぶ電子が増えると、衝突相手のイオンも比例して増大するからである。
衝突する際の相対速度は、ほとんど軽い「電子の熱速度」で決まる。
そのため、導電率は、実質的に「電子温度」のみの関数となる。
導電率を上昇させるには、プラズマ中に電離電圧の低いアルカリ金属などを添加する。
希ガスとアルカリ金属の電離電圧(V)
希ガス He 24.6、Ne 21.6、Ar 15.8、Kr 14.0、Xe 12.1
アルカリ金属 Na 5.1、K 4.3、Cs 3.9