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論文審査結果の要旨

反応性イオンエッチング用プラズマ源の1つとして、磁化プラズマが注目されている。磁場を用いることによって電子が磁力線に巻き付き壁面への損失が抑えられるので、高密度なプラズマを生成できる。低圧下のこのような高密度プラズマは材料処理の上で重要である。本論文は、粒子モデルによって磁化プラズマを解析し、その諸特性を解明したもので、全編10章からなる。

 第1章は緒論である。

2章では、今まで材料処理用プラズマを数値解析する際に問題となっていた、中心附近のグリッドでの電荷密度の非物理的揺らぎを、局所的重みの概念を導入し大幅に軽減する手法を提案している。またこの手法の妥当性を従来の解析手法の結果と比較することによって明らかにしている。本手法は今後の高密度プラズマの解析に有用である。

 第3章では、2次元の直流放電を対象に多極磁場のプラズマへの影響を系統的に明らかにしている。例えば、高エネルギー電子の平均自由行程がプラズマ閉じ込め効果を支配すること、最適な磁極数が存在することが明らかにされている。これらの成果は、多極磁場を有するプラズマ反応器の設計に際し、有用な指針である。

 第4章では、多極磁場を有する3次元容量結合プラズマを対象に、放電圧力と磁場が、プラズマ構造に及ぼす影響を明らかにしている。例えば、高周波放電の場合は直流放電と比べ高い圧力においても多極磁場が有効であること、多極磁場がイオンフラックスの不均一をもたらすことが明らかにされた。これらは反応器設計上、有用な知見である。

 第5章では、まず誘導結合アルゴンプラズマを対象に電子の加熱機構である無衝突加熱の寄与を評価した。 これにより、吸収電力一定の条件下では無衝突加熱の効果を考慮しないと、低圧力下ではプラズマ密度を過剰に見積もってしまうことを明らかにしている。またバイアスの周波数や電圧振幅が放電および入射イオンのエネルギー分布関数(IED)に与える影響を他者の実験や理論と比較し、本解析の妥当性を立証している。

 第6章では、誘導結合CF4プラズマを対象にガス圧力、吸収電力を変化させた解析を行い、プラズマの特性を明らかにしている。またウエハーにバイアスを印加した解析では、入射イオンのIEDが他者の実験と一致することも示され、本解析の信頼性を裏づけている。

 第7章では、アルゴンとCF4の混合ガスの誘導結合プラズマに対する混合比の影響を解析している。CF4の混合比によって電子密度の空間分布と電子エネルギー分布関数が大きな影響を受けることを明らかにしている。

 第8章では、誘導結合CF4プラズマを対象に装置内のラジカルの流れ解析を行なっている。この解析により、装置内の流れとラジカルの空間分布を明らかにしている。また表面反応を考慮した解析ではエッチング生成物がエッチング速度に与える影響を明らかにしている。これは最適な加工条件を選定する上で有用な知見である。

 第9章では、第6章と第8章の解析を融合し、プラズマと流れを連成させた解析モデルを構築し、中性ガス分布の流れ場がプラズマ構造に与える影響を明らかにしている。これは反応器の作動条件を選択する上で有用な結果である。

 第10章は結論である。 

以上要するに本論文は、磁化プラズマ装置の設計に必要な信頼性の高い解析モデルを構築し、これを用いて設計に有用な知見を与えたもので、機械工学および電子工学の発展に寄与するところが少なくない。

 よって,本論文は博士(工学)の学位論文として合格と認める。